私が採った、2017年度司法試験に一発合格するための勉強法(論文)ー各論編 ー【憲法】
第一、はじめに
2017年度司法試験の憲法はA判定でした。民事系もA判定でしたので、これらA判定の科目についてだけ、各論編を記述していきたいと思います。ですが、もっとも私の勉強のノウハウが詰め込まれているのは、【私が採った、2017年度司法試験に一発合格するための勉強法(論文)ー総論編 】です。ですので、まずは総論編を何度も読んでいただければと思います。なお、この各論編ー【憲法】ーは、目的手段審査の採用を前提としております。それでは、各論編のはじまりはじまり。
第二、憲法の勉強の方向性
(一)基本となる2つの力
私は、憲法は選択科目を含めた8科目の中でもっとも難しい科目だと思います。ですので、憲法の勉強については次のことが特に重要になります。それは、①誰でも知っていて当然の知識を確実に身につけ、②それを具体的事例に沿った形で確実に表現できるようにする、ということです。
ここで重要なのは、①と②が別物の力であるということです。①は基本書や演習書によるインプットで身につけることができ、②は司法試験の過去問を解いてみて、上位合格者の答案を読んだり採点実感を読んだりすることで身につけることができるものです。
この二つの力を身につけるという意識で普段の勉強を進めれば、憲法が得意にはならずとも、不得意にはならないはずです。
1.具体的には?
(1)①の力
憲法の基本書や論文、演習書には、かなり難解な理論が度々登場してきます。そのような難解な理論について、ある程度頑張って理解できたとしても、さあそれを答案で表現できますかと言われたら、なかなか難しいでしょう。ですので、司法試験合格という水準を頭に作り、それを超えてくる難解な理論については思い切って捨ててしまう、ということも私は必要であると考えております。ここで留意して頂きたいのは、司法試験合格という水準を正確に作る、ということであります。この水準の作り方については、【私が採った、2017年度司法試験に一発合格するための勉強法(論文)ー総論編 】をご参照ください。
司法試験の憲法で合格点を獲得するために必要なのは、誰でも必ず知っているような当然の知識を確実に頭に入れてしまう、ということであります。例えば、表現の自由の問題を考えてみると、違憲審査基準を厳格にする要素がいくつかあるはずです。内容規制なのか、政治的表現が問題となっているのか、事前抑制的側面を持つのか等です。こういう当然の知識を、確実に頭にたたき込んでおいて、問題文を読めば反射的に出せるという状態にしておきましょう。
(2)②の力
①の力を身につけている受験生は多いはずです。ですが、①の力だけでは憲法の点は伸びません。憲法の点を伸ばすには、①の力を、具体的事例に則した形で表現することが必要になります。この②の力を身につけることによって、憲法の答案はグッと締まると思います。
具体的に言い始めるとめちゃくちゃ長くなってしまって、キリがないのですが、いくつか例を挙げるとするなら、まず権利の名前の付け方です。例えば、憲法21条の知る自由が問題になっているとしましょう。ここで、事例の特徴を無視して、なんでもかんでも「知る自由」と権利名を付けてしまうのは、ナンセンスです。インターネットを通じた知る自由が問題になっているならば、「インターネットを通じて情報を受領する自由」等、具体的事例に則した形で権利名を付けるべきです。
違憲審査基準の厳格度決定の過程についても、同様です。①の力しか身についていない人は、「本件は、内容規制であり、表現に対して重大な脅威をもたらすものであるから、 違憲審査基準は厳格にすべきである」とだけ書いて満足してしまいます(いわゆる採点実感にいわれる紋切り型の答案というやつ)。そうではなくて、本件事例では、どのような事情がどう作用して内容規制なのか、このような内容規制の場合なぜ当該表現に対する重大な脅威となるのか、そこまで書く必要があります。
上位合格答案と不合格答案の差はここにあると思います。こういうところを意識して、採点実感や上位合格答案を読むべきです。
(二)3つめの重要な力
③事例にちりばめられた事情が、目的手段審査の論述の中のどこで意味を持つのかを即座に判断できるようになる、ということも非常に重要になります。目的手段審査で論述をする際には、まずa.違憲審査基準の厳格度を決定し、その後b.目的審査、c.手段と目的の関連性審査、d.手段の相当性審査へと移りますよね(皆さんが用いていらっしゃる用語と多少の差異があるかもしれない)。
そして、重要なのは、当該事例において出現した事情が、a~dのどこで意味を持つのかを即座に判定する能力であります。このような力は、演習書や司法試験の過去問を繰り返し解き、その過程の中で身につけることができます。判例や上位合格答案を読んでみて、判例や上位合格者が、事例中の事情をa~cのどの段階でどのようにして用いているのか、そういうところに着目してみましょう。
確立された憲法の答案の型に事情を落とし込んでいけるようになる、それが重要です。
第三、憲法の答案の書き方
憲法の答案の書き方は、抽象的に言ってしまえば、上記①②③の力を発揮して書けばよいということになります。ですが、それだけではよくわからないと思いますので、私が過去問研究などで培った論述の作法的なものを記述しておこうと思います。
(一)論述の順番を絶対に崩さない
論述の順番は、①保障範囲、②制約の有無、③違憲審査基準の設定、④目的手段審査(a.目的の正当性、b.目的と手段の関連性、c.手段の相当性)です。この順番は絶対に崩してはいけません。これを守ることで、とりあえず憲法の答案としての体裁をなすはずです。
論述の分量の振り分けですが、ほとんどの場合、もっとも分量を割くべきは④です。①~③に関しては、事例によって分量が変動します。①保障範囲は、例えば、当該原告主張の権利自由が明らかに21条の保障範囲に入る場合には薄くてよいし、②制約の有無についても、制約がそもそもないんだという議論が説得力に欠ける場合には、敢えてここでもがく必要はありません。具体的事例に沿って、分量を考えましょう。
憲法は、①~④の過程で、書こうと思えばいくらでも書くことができてしまう科目です。憲法の点を伸ばすには、原告被告で争いの余地のないような部分については思い切って一行で済ませ、説得的議論を展開できる箇所を厚く書くというのが鉄則です。
(二)原告の主張はそれなりにしっかり書く
ここは議論のあるところだと思いますが、私は、原告の主張はそれなりにしっかりと書くべきだと思っています。つまり、①保障範囲、②制約の有無、③違憲審査基準の設定、④目的手段審査という順序を守って、それなりに説得的な議論を展開すべきということです。その理由は、原告の主張をしっかり骨子を固めて書くことによって、反論・私見の論述がしやすくなるからです。原告の主張に骨子があれば、反論・私見は、その骨子に則って展開すればよいので、論述がしやすくなる、ということです。
分量は、配点表記がある場合にはそれに従いますが、配点表記がない場合には、原告:被告:私見=4:2:4で良いと考えております。
(三)問題になりそうな権利自由が二つ以上ある場合には、二つは書く
制約が問題になりそうな権利が二つ以上ある場合には、過去問の傾向的に、原則として二つ以上は書くべきだと思います。
ただし、表現の自由の制約が明らかに問題になり、サブで経済活動の自由の制約が問題になっている場合には、より原告勝訴可能性の高い表現の自由を優先的に書き、経済活動の自由については書くとしても簡潔にすべきでしょう。
法令違憲のみを論ぜよとか、適用違憲のみを論ぜよとか、そういう指定がない限りは、過去問の傾向的に両方を論じるべきでしょう。
(五)第三者の権利自由であっても甘く見るな
訴訟当事者の権利自由ではなく、第三者の権利自由をメインで論じることを求めている過去問もあります。第三者の権利自由であるからといって、論述をおろそかにしないようにしましょう。
第三者の権利自由が出てきた場合には、訴訟当事者における第三者の権利の主張適格を論じることを忘れないようにしましょう。
(六)論述を事例に寄せる
②の力の説明でも述べたところでありますが、とにかく憲法の司法試験委員は、抽象的論述を嫌います。自分のもっている憲法のあらゆる知識を、事例に合わせて加工して、表現するということを常に心がけましょう。これができるかできないかで、憲法で合格点が採れるかどうかが決まります
第四、まとめノートの材料に使用した外せない参考書とその評価、まとめ方
(一)基本的参考書
評価:★★★★☆
憲法は、他科目に比べると良質な演習書が少ない印象を受けます。そのような数少ない良質な演習書の中でもおすすめしたいのが、この事例研究憲法です。問題文もそれなりに長いですし、参照法令もあって司法試験向きです。解説も丁寧で、そこまで難しいことは書かれておらず、実践的な知識が多いです。事例も豊富で、現在的な問題もいくつか含まれておりますから、その意味でも司法試験対策としてはかなり有益だと思います。
評価:★★★☆☆
演習書ではないですが、有名論点について、優しく詳しい解説が書いてあります。かゆいところに手が届く一冊といえるでしょう。
評価:★★★★☆
憲法の学習の際には必須です。
(二)まとめ方
まとめノートの総論的な作り方は、【私が採った、2017年度司法試験に一発合格するための勉強法(論文)ー総論編 】をご参照ください。
殊、憲法に関しては、出題形式に特徴がありますので、それに合わせてまとめノートは工夫して作成しておりました。それは、原告・被告・私見という形で知識をまとめて作成するというものです。
私のノートのスクリーンショットを載せておきます。
問題文中にある事情を、原告の主張として使うか、被告の反論として使うか、はたまた両方で使うか、このようなまとめ方は、そういう思考の訓練になりますので、おすすめです。
第五、終わりに
やや文章が冗長になってしまいました。しかし、このノートでご紹介したような基本事項をしっかり守れば、憲法で大ごけすることはないはずです。皆様の何らかのご参考になれば、幸いでございます