私が採った、2017年度司法試験に一発合格するための勉強法(論文)ー総論編

第一、はじめに
 
 私は、2017年度司法試験に一回目で合格することができました。予備校等は模試以外は利用しておりません。これからご紹介するのは、私が採った司法試験に合格するための勉強法であります。司法試験に合格するための勉強法は幾通りもありますので、その一つに過ぎない、ということです。ですので、皆さんには、「ああ、こういう勉強法もあるんだなあ」と思っていただいて、自分の性に合うようであれば、採用していただければと思います。では、はじまりはじまり。
 
第二、私が採った勉強法
 
(一)まとめノートを作る
 
 各科目のまとめノートを作るというのが、私の勉強の基本スタイルであります。私統計ですが、ロースクールでも優秀な方々の多くは、丁寧なまとめノートを作成されていたように思います。では、以下、まとめノートの目的、効果、作成方法等をご紹介していきましょう。
 
1.まとめノートの目的
 
 ズバリ、素早い記憶喚起にあります。司法試験に合格するために必要な知識は、決して少なくありません。判例・学説など、とにかく理解して、覚えておかなければならない知識が多い多い。しかし、人間(天才は除く)というのは、嫌になるほどに忘却する生き物であります。 そこで、役立つのが、今までの知識を体系的かつ簡潔にまとめ込んだ、オリジナルのまとめノートであります。
 司法試験までにこのまとめノートを、すべて丸暗記するほどに何度も何度も何度も読み返し、直前期にもう一度見直すことによって、数年間の受験生活で学んだ全知識を短期間で、最大精度で呼び起こす、これがまさにまとめノートの目的であります。 いくら勉強をしていても、司法試験受験時に覚えていなければ、結局何もやらなかったのと同じことなのです。
 
2.まとめノートの効果
 
 では、まとめノートの作成によって得られる効果とは何か。まずは、先ほど申し上げました、素早い記憶喚起であります(これが最大の目的であり効果である)。実は、まとめノートを作成することによって得られる効果は、これだけではありません。
 
(1)知識の整理力
 
 まとめノートを作る際には、様々なものを参照します。論文、判例、参考書、基本書等々。それぞれをなんとなく読んでいる時には、「ふむふむ、そうかなるほど」とわかった気になるのですが、いざまとめてみよう!となると、「あれ、この判例と学説は同じ立場なのか?」とか、「最高裁と高裁、結論は一緒だけれども論理が違うのでは?」とか、いろいろな疑問が出てくるものです。
 そこを、考えに考えて、整理して、まとめノートに自分の言葉(もちろん、法律用語を用いた解答で使える言葉)でまとめあげた時に、知識の整理力が身につくのです。この知識の整理力は、法律を学んでいく上で(というか、生きていく上で)基礎になるものであって、どこで役に立つのかと言われれば、常に役に立つというべきでしょう。
 そして、整理された知識であるからこそ、解答で書くことができるのです
 
(2)確かな三段論法
 
 まとめノートの作成方法は後述しますが、先に一つ言いますと、まとめノートは常に論証を作るイメージで、三段論法で作成します。まとめノートを作る際の材料は、論文、判例、参考書、基本書等々になりますが、これらはほとんどの場合、三段論法では書かれていません(だから、そのまま解答で使うことは当然できない)。これらの材料をまとめノートに三段論法でまとめていくのですが、その過程で、確かな三段論法を身につけることができます。これは、答案力に直結します。
 
3.まとめノートの作成方法
 
 では、一番肝ともいうべき、まとめノートの作成方法を見ていきましょう。
 
(1)問題提起から書く!
 
 先ほどは三段論法でまとめると申し上げました。一般的にいわれる三段論法とは、規範定立→あてはめ→結論です。ですが、まとめノートを作る際には、問題提起→規範定立→あてはめ→結論でまとめましょう(なお、あてはめという言葉は解答ではあまり用いない方がよい。「検討」などがよいでしょう)。その理由は、単純です。司法試験の解答は、問題提起から始まるからです。問題提起で失敗すれば、後の方向修正などあり得ません。問題提起はすべての出発点であり、結論なんかよりよっぽど大事!と私は考えています。
 このように問題提起からまとめることで、当該論証がどのような場面で用いられるべきものかを明確に意識することができます。全く見当外れの論証をもってきてしまう、ということは少なくなるでしょう。
 
(2)論証で書く!
 
 上で述べたことと被りますが、まとめノートは論証で書きましょう。言い方を換えると、司法試験の答案にそのまま使える形式・長さで書きましょう、ということです。理由は、いうまでもないですね。
 その際、注意すべきなのは、論証が長くなりすぎないようにする、ということです。司法試験の試験時間って、驚くほどにタイトですよね。2017年度の刑法はご覧になられましたか?どえらいですよ。僕の経験上、長い論証は全く使い物になりません。そんなのを長々書いている暇があるのなら、あてはめ頑張れ!ということですね。
 
(3)規範の理解をまとめる!
 
 まとめノートには論証をまとめていくのですが、それだけだとまとめノートはかなり殺風景なものになってしまいますね。もはや基本になりつつあるのですが、司法試験でより重要なのはあてはめです。「規範は簡潔に、あてはめを濃厚に!」ですね。
 ですが、あてはめは、規範あってのものであって、規範を軽視してもよいということではありません。「規範は簡潔に、あてはめを濃厚に!」の本当の意味は、規範でごちゃごちゃ書かんでええから、あてはめで規範の理解を示してちょーだい!」ということだと思います。
 ですので、規範の理解は必須です。それを、まとめノートには是非書いてほしいと思います。例えば、①判例は、この規範を用いた当てはめの際、このような事情を重視(あるいは軽視)している、だとか②この規範と似た規範が別にあるが、これらの規範の使い分けはこうであるだとか、③この規範では、aという考慮要素は挙げられていないが、aを考慮すべきとする学説もあるだとか、そういう規範の理解が、あてはめで活きてきます。
 このような規範の理解を、まとめノートにはまとめて欲しいと思います。
 
(4)入り込みすぎるな!
 
 勉強熱心な方は、まとめノートに必要以上の知識を書き込みたくなるものです。ですが、思い出してください。まとめノートの目的は、素早い記憶喚起にあります。多すぎて深すぎる知識は、ページ数の増大を招き、素早い記憶喚起を妨げます。簡潔に、体系的に、司法試験合格のために必要な知識だけをまとめていく、これを常に意識してください。
 では、司法試験に必要な知識かどうかの判断はどのようにすればよいのでしょうか。
 
ア、司法試験の過去問を解く
 
 司法試験に必要な知識を知るには、司法試験を解くのが一番です。過去問を解き、採点実感を読み、求められている知識の範囲、深さを知ります。このような作業は、ロースクールに入学したら、まずやるべきでしょう。この作業によって、自分の中に正確な判定基準を持つことができれば、効率よく合格に向かうことができます。
 
イ、優秀な友人や教授に問うてみる
 
 司法試験の過去問をいくら研究したところで、結局、判定は自分の主観なのでそれだけを信じるのはやはり危険です。優秀な友人や教授に聞いてみて、その意見を参考にするのもよいでしょう。
 
(5)まとめすぎるな!
 
 まとめノートを完璧にしてやる!と思って、何でもかんでもまとめたくなりますが、正直、それは時間の無駄です。本の丸写しになるような場合には、付箋などを本につけておいて、試験直前に見直せるようにしておけばよいと思います。
 
(6)パソコンでまとめろ!
 
 早いし加除修正がしやすいので、絶対パソコンでまとめるべきです。
 
(7)分量は極力少なく!
 
 とはいっても、僕も民法はA4200ページで、その他の科目も100ページを超えるものがほとんどでした。最初は見直すのに10時間くらいかかりましたが、なれてくると3時間程で見直せるようになります。
 
(二)演習書を読む
 
 私の勉強の基本スタイル、その2は、演習書を読む、です。この勉強法は、大阪地裁のとある裁判官の方もとられていた方法ですので、一定の信頼度があります。
 
1.演習書を読むとは
 
 演習書を読むって?とお思いかもしれません。演習書は、解くものでしょう!はい、確かにその通りです。しかし、演習書を解くことによってそれなりの学習効果を得るためには、演習書を解くために必要な最低限の知識を有していることが前提となります。そこで、私が提案したいのは、演習書を読む勉強法、すなわち、演習書をインプットに使う!という勉強法であります。
 
(1)具体的方法
 
 具体的には、まず事例を読み、頭の中で軽く論点を探し(5分くらい)、その後すぐ解説を読むというものです。ただしこの際、解説はめちゃくちゃ丁寧に読みましょう。線を引いたり、わからないことはメモしたりします。そして、この作業のすぐ後に、この演習書で得た知識を、まとめノートにまとめていきます。その際、演習書だけでは不十分な箇所を、基本書や論文などで補います。
 この方法は、めちゃくちゃ時間がかかりますが、かなり効率よく演習書の知識を吸収していくことができます。演習書に載っている知識は、どの参考書よりも実践的(対司法試験という意味において)であります。ですので、演習書をインプットに使うというのは、司法試験に合格するための知識を得る方法としてはベストではないかと考えております。
 
(2)どの演習書がよい?
 
 定評のある演習書を、各科目、最低三冊はやりましょう(私が実際に使っていた演習書は「私が採った、2017年度司法試験に一発合格するための勉強法(論文)ー各論編」で掲載予定です)。これを全部まとめノートにまとめます。そうすれば、司法試験に出てくる論点の6,7割は網羅できる最強のまとめノートが完成することでしょう(私のまとめノートは、実際、2017年度の司法試験に出た論点の7割はカバーしておりました)。
 
第三、終わりに
 
 以上が、私の採った勉強法の肝の部分になります。重要と思われることはすべて書き出したつもりですが、きっと何か大事なことを忘れていることでしょう。読んでくださった皆様の、何らかのご参考になればこれ以上の喜びはございません。